カテゴリー「文楽」の記事

2009年11月11日 (水)

セレブな芸能

友人に誘われて、「能楽のススメ」なるイベントに参加してきた。
これは、12月に行われる能「屋島」の事前勉強会みたいなものだ。

能の歴史、ストーリー理解にあたって最低限知っておきたい平家物語のエピソードから、装束や小道具のウンチク、さらにはプチ謡教室まであり。
ここまでやれば、さすがの私も(ほとんど)寝ないであろうと確信できる充実ぶりだった。

ただ・・・今日もまた、能ってやっぱ「セレブな芸能」ってことを感じてしまったな。

能というのは、室町幕府の足利義満にはじまり、豊臣秀吉、徳川家康と、時の権力者に愛され、庇護を受けてきた芸能だ。

そういう歴史に基づいた「我こそは正統派」というプライドを、能の世界の人たちからは感じる。庶民の芸能で、反骨精神にあふれている文楽や歌舞伎とは対照的だ。

たとえば今日も、能・文楽・歌舞伎のルーツに関して、

「江戸時代になって、能は『武家の式楽』とされたため、武士以外の人はみることができなくなってしまった。そこで能に代わって庶民の間で生まれたのが文楽そして歌舞伎である」

といった説明がなされていた。
ちょっと違うんじゃない?と思ったんだけど・・・能を中心にしてみると、そういう説明になるのだろうか。

あるいは、今日のようなイベントや、小学校などへの出張授業などが増えたことについても、

「能がユネスコの世界遺産に登録されてから、『肝心の日本人が能を知らないのはマズイのでは』ということになった。それで学習指導要領なども変更され、能の裾野を広げる活動が増えた」

といった説明をなさっていた。

文楽の技芸員さんも、今日のような活動にはものすごく熱心だ。だけど文楽の世界の人たちはもっと純粋な営業マインドでやってる気がする。オープンでフレンドリーで、とにかく、お客さんを大切にしてくれるのだ(そういうところが大好きだハート達(複数ハート))。その根底には、「お客さまを増やさなければ、文楽そのものの未来はない」という危機感が常にある。
(実際、文楽はその歴史上何度か滅亡の危機に瀕している。)

そのあたりも・・・なんだか違うなあと感じてしまう。

「能は敷居が高いといわれますが、実際はぜんぜんそんなことありません」といわれたけど、そんなこんなで、「やっぱり敷居高いじゃん」と感じてしまう、セレブになりきれない私なのであります。もっと素直になれヨ≫自分あせあせ

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2009年9月23日 (水)

【文楽】沼津ボロ泣き&お園より三勝

文楽9月東京公演の第2部に行って参りました。

「伊賀越道中双六」沼津の段と「艶容女舞衣」酒屋の段という、超名場面の二連発。しかも、人間国宝4名そろい踏みという、ゴーーージャスッな舞台。

で、前半の「沼津の段」で私はもうボロ泣き。
この話、観るのは二度目なので、筋書きは全部わかってる。
しかも、クライマックスでも何でもない導入部分から、人間国宝の竹本綱太夫さんが語っちゃうという、何とも心憎い配役。
ちょっとした台詞のやりとりでさえも、

「じつはこの二人、親子なのに・・・涙
「親子なのに・・・たらーっ(汗)
「親子なのにぃぃぃ・・・泣き顔

わかってるだけに、もう泣けて泣けて仕方ない。

昨日は劇場でマスクをしていたのだが、そのマスクの中まで涙でぐしょぐしょで気持ち悪くなるほど。恥ずかしかったので、休憩時間は速攻でトイレに駆け込み~走る人

(でも、昨日いっしょに観劇した人は「沼津」初めてだったため、人間関係を理解するのにいっぱいいっぱいだったとのこと。テンペストだけじゃなく、こちらも人間関係図をプログラムに載せるべきじゃないかしら。もはや今の日本人の常識じゃないんだし)


そして後半は「酒屋」。
こちらは、処女妻お園(と、ものの本にはよく書いてある)の、
「今ごろは半七さま、どこにどうしてござろうぞ」
という名台詞と、美しい人形振りで超有名だ。

昨日お園を遣ったのは、人間国宝の吉田文雀さん。
この場面になると、客席全体が静まり返り、皆が固唾をのんで見守ってる風だった。

でもでもねえ・・・・・・。
正直いうと私はこの、お園という女性にどうも共感できない。

一夜もともにしたことのない名ばかりの夫のことを「どこにどうしてござろうぞ」とか言えるわけないと思うし、遺書で「夫婦は二世の契りというから、来世では必ず夫婦になろうね」なーんて子どもだまし(?)のようなことを言われて素直に喜べるのも信じられない。

そんな私が、スレすぎてるのか?
すみません。

でも、私が共感できるのは、むしろ三勝のほうだ。
好きな男の家からは妻とも認められぬまま、愛する子どもを置いて、男と死への旅路をともにする決意をした女性。ラストシーンで一番身を引き裂かれる思いだったのは三勝だと思う。

いっぽうのお園は、その後、三勝の娘を「半七さんの忘れ形見♪」とかいって楽しく子育てして、意外と幸せな未亡人ライフを送ったんじゃないかしらね。

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2009年7月23日 (木)

観劇マラソン@大阪

090722kawataro昨日まで3日間のマラソン(?)の記録。

◆宝塚花組「ミーアンドマイガール」(1日目)

この日で千秋楽だったのだけど、これで終わってしまうのがもったいない感じ。せっかくノッてきたところなのに・・・東京公演の機会があればいいなと思う。
まとぶんのビルはホットで情の深いビルだった。


◆文楽「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」(1日目)

シェイクスピアの「テンペスト(あらし)」の文楽バージョン。登場人物も文楽っぽく脚色してあるし、曲も良い。でも・・・でも・・・・( ̄~ ̄;)
なんか物足りないのは何故だろう??
それでも、こういう試みは意味あると思うけど。


◆宝塚星組「太王四神記Ver.2」(2日目)

新生星組タムドン参上~!!
スリートップの並びが超ゴージャァァァス☆彡で、うれしくなっちゃった(^-^)
いやー若いっていいな。これからに期待♪


◆文楽「化競丑満鐘(ばけくらべうしみつのかね)」(3日目)

ろくろ首の姫君を救うため、狸の武士が妻の雪女の命を犠牲にして忠義をつくす話。ちなみに狸と雪女夫婦の息子がなぜか河童の川太郎(写真)。
妖怪オールスターで文楽の典型的な時代物をやってくれるのは私としては面白かったけど、客席の子どもはどうだったんだ?(笑)(←いちおう「親子劇場」の演目だったからなぁ)


◆文楽「生写朝顔話」(3日目)

これは古典の名作。
4時間の長丁場だったけど、結局これでようやく「文楽みたぞ~~」という気分になれた私っていったい(´Д`)


090722herekatsu ※そしてビールにヘレカツ弁当。帰りの新幹線のお約束。

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2009年7月22日 (水)

大阪のガキんちょは

大阪3日目。
国立文楽劇場で、「夏休み文楽特別公演」を観ている。
子ども仕様だが、なかなか面白いのだ。
この公演では「体験コーナー」があるのが恒例。
客席の子どもたちの代表が、教えてもらいながら実際の人形を遣うのだ。

それで毎回驚くのは、「誰かやってみたい人〜?」と呼び掛けると、必ず、

「はーい!」
「はーい!!」
「はーーい!!!」

と、ものすごい勢いで手が挙がることだ。
さすが大阪のガキんちょ恐るべし。
こういうのを見ると、日本の将来も安泰だね、という気分になるなあ。

今日の体験はつめ人形二人でのチャンバラ。みんな上手だった。
この中から、文楽の未来を支える人材が育つといいな。

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2009年5月25日 (月)

だめんず源太

5月文楽公演、第2部の「ひらがな盛衰記」。
源氏の武将、梶原源太景季が、勘当の身から見事に戦に出陣していくまでを描いた物語だ。

この梶原源太景季クン、文楽のイケメン二枚目役に必ず使われるかしら「源太」の名前の由来のもととなった人物である。

※かしら「源太」はこれね↓
http://www.lares.dti.ne.jp/~bunraku/mystery/ningyou/tatiyaku/gennta.html

この「源太」というかしらを使う役というのは、イケメンなんだけど、なんだかだめんずっぽい男が多いのだ。
そして今回も、本家本元の「源太」だけあって、そのキャラもやっぱり究極のだめんずだった。

勘当中は、恋人が傾城となって養ってるし(つまり、ほとんどヒモだな)。彼女に廓づとめでさんざん苦労させても平然としてるし。

そのくせ、彼女(傾城梅が枝)の父を殺したのが、じつは源太の父親だと判明したときも、「父の仇を討つべきか、彼との愛を取るべきか」と身を引き裂かれる思いの彼女に対して、

「残念ながら女に敵を討たれるオレ様じゃーないぜ。あきらめて尼にでもなるんだな」

とか、いっちゃうし。ヒドいなぁ~ふらふら

極めつけは、豊竹英大夫さんが語った「辻法印の段」だ。
一の谷の合戦に馳せ参じて人生を一気に挽回したい源太は、なんと知り合いの怪しげな占い師に「弁慶」のフリをさせて、百姓たちを騙して米をかき集めて金の工面をしちゃうっていう。
ホント笑える場面だったけど・・・これって「詐欺」ちゃうの~あせあせ(飛び散る汗)

でもでも、最後は母と恋人の深~~い愛の力ハート達(複数ハート)により、金銭問題も人間関係の問題もすべて解決!
さっそうとした武者姿で、出陣していくのでした。
めでたし、めでたし。

今月は忠義のために無駄に死ぬ人が誰もいないストーリーで、ホントよかったです。


そして一句。
「イケメンは 何をやっても 許される」

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2009年5月10日 (日)

ここは大人の空間だぜ

5月は文楽強化月間であります手(チョキ)

今日は国立劇場小劇場に文楽東京公演の第1部を観に行く。
演目は「寿式三番叟」「伊勢音頭恋寝刃(十人斬りで有名!)」「日高川入相花王(安珍・清姫の物語)」。

それぞれ趣が違って、なおかつどれもわかりやすく、しかも人間国宝6人揃い踏みの豪華さ! 
個人的にはこってりと義理と人情にまみれた段物のほうが好きなんだけど(^^;)、こういう舞台をみんなでワイワイ楽しむのも、またいいなと思う。

さて、私からみて通路はさんで斜め前の席に、なんと母子連れが~! 子どもは、小学校に上がる前ぐらいの男の子だ。

文楽の客席でそんな小さな子どもを見かけたのはほぼ初めてで、「だ、だいじょうぶか?」という不安と、「このトシから文楽好きだなんて、もしかして未来の技芸員候補?」という少しの期待を抱きつつ席に着く。

案の定、期待ははずれ、「三番叟」のころはおとなしく観ていた男の子だったが、「伊勢音頭恋寝刃」が始まるころから、次第にむずかりはじめた。
そりゃ~そうだよなぁ。やっぱり文楽はせめてR10指定でしょう。
もしかして「人形劇だよ~」とダマされて来たのか? ・・・そりゃ違いますからあせあせ


舞台上で主人公が一人また一人と人を斬って行くごとに、男の子の暴れ具合も絶好調に!
私も、舞台そっちのけで、男の子のほうが気になって気になって仕方ない。

最初は母親の膝の上で暴れるだけだったのが、そのうち前の席を足で蹴るわ、ペットボトルをぺこぺこさせるわ。
もちろん、母親は必死に押さえ込もうとするんだけど、その母親もふと舞台に見入ってしまう瞬間があり、その隙に通路に走り出るわ、挙句の果てには通路に大の字に寝転ぶわ。

主人公の十人斬りが一段落したころ、ついに母親も観念して、子どもを引っ張って客席を出て行った。

そして、「日高川入相花王」のときには、その母子はもう現れなかった。
気の毒に思いつつも・・・でも、正直、ほっとしてしまったあせあせ(飛び散る汗)

きっと、そこまでしても観たい文楽だったんだろうなあ、と思う。
でも、やっぱり子どもを連れて来るのは、ちょっと無理がある。

きっと、周囲の客席だけじゃなくて、演者さんだって舞台に集中できなくなってしまうのではないかしら。
男の子だって、あれだけ母親にぎゅうぎゅう押さえ込まれて、イヤだったに違いない。文楽がトラウマにならなきゃいいけれどねあせあせ

ていうか、それほどまでに観たい文楽なんだから。
ダンナさんとか、半日ぐらい子どもをみてやれよーーーーーって思うんだけどな。

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2009年4月17日 (金)

本の縁、本の力

今日、ちょっと感動したことがあった。
いつも非常にお世話になっている某山口県人会の方から聞いた話である。

ちなみに私は新刊が出るたびに、この県人会のイベントに乗り込んでいっては売らせてもらっているのだ(笑)
地元ネットワークって、ホントありがたいわーい(嬉しい顔)


話というのは、その方が法事か何かで、山口県の親戚の家に行ったときのことだ。
なんと玄関先に私の本「熱烈文楽」が置いてあったんだって!!

聞けば、法事に来たお客さんの誰かが忘れていったんだと。
これが第一のビックリexclamation


さて、その家には、大学生ぐらいの男の子がひとりいるそうな。
これがおじいちゃんにいわせると、
「ぜんぜん勉強しない、どうしようもない孫」
なんだけど、その彼が何故か「熱烈文楽」を妙に気に入って、部屋で熱心に読みふけっていたんだって。
これが第二のビックリexclamation ×2

どうしよう・・・彼が数年後に国立文楽劇場の舞台にいたりしたら(笑)


やっぱ悪いことはできないな。・・・いや、ワルいことも多少はしないといけないのだけど、ちゃんと選んでしないと(笑)

本ってどこで誰が読むかわからないし、どこで誰の人生に影響を与えるかわからない。
やっぱり、心して創らなくては。

そう、改めて思ったな。

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2009年4月 7日 (火)

妖怪専門誌の文楽特集だ~

長らく冬季ニート生活を送っていた私ですが、ようやく春めいてきて仕事モード入ってきた今日このごろ芽
・・・て、お前は変温動物かよ!って感じですが。
(まぁかっぱだからね)

というわけで、珍しく仕事関係のネタ。

角川書店の「怪」っていう雑誌、ご存知ですか?
なんと妖怪専門の雑誌だそーで、1冊1500円もする。執筆陣は京極夏彦さんや水木しげるさんなどで、中には妖怪関連の小説やら漫画やら特集記事が満載!

雑誌が売れない今の時代にしては堅調に売れてるらしく、根強い「妖怪ファン」っていうのも存在するんだということには驚きだ。

この「怪」3月号(4月3日発売)に「文楽 その妖しの美」っていう特集記事がありまして、この中の「文楽を楽しむ7つの基礎知識」っていう部分を執筆させていただきました。

肩書きはなんと「BUNRAKUナビゲーター」!
記事の内容は拙著「熱烈文楽」の要約みたいな感じなんですけどね。

あわせて、おすすめ書籍のコーナーに「熱烈文楽」も掲載されております!!

しかし・・・なんで「怪」なんだ??
やっぱり、かっぱだから???


というわけで、もし妖怪マニアの方いらっしゃいましたら、ご覧になってみてくださいウインク

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2009年2月22日 (日)

恐るべき人妻

二月は文楽が東京公演の月。
したがって、今月は「文楽強化月間」だったんです。じつは。

なかでも第一部の「鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねのかたびら)」が抜群に面白かったから、感じたことをちょこっとメモしておく。

これ、近松の晩年の作品なのだけど、当時はいまひとつウケなかったみたいで、一度しか上演されなかったらしい。
でも、じつに深いよ、この話!

ひとことでいうと、人妻と年下男の不義密通(?)話。

主人公は、武家の女房おさゐ(37歳)と、武芸にすぐれ、かつ超いい男の権三(25歳)
このふたりが、ひょんなことから不義密通の濡れ衣を着せられ、おさゐのダンナに「妻敵討(めがたきうち)される」っていう話なんだけど・・・
(当時の武家社会では、女房を寝取られたダンナは妻と間男を討たねばならないということになってたらしい)

※詳しいストーリーはこちらのブログなんかがおすすめ。


プログラムの「あらすじ」やマジメな解説本を読むと、不義密通の濡れ衣を着せられ、最期は夫の手にかかる貞節な妻の悲劇、みたいに書いてあるけれど、今回観劇して、そりゃ全然違うと思った。

おさゐは権三に心底惚れていたんでしょう。娘の婿に迎えたいといいつつも、
「母が独り身ならば、絶対ほかの男に渡したりしない揺れるハート
とかいっちゃうくらい。

でなきゃ「茶道の秘伝の巻物をみせる」という名目をつかって、夜中にひとり権三を呼び寄せたりしない。

ふたりきりの妖しい雰囲気になったとき、権三が婚約者の手作り帯を締めているのをみて嫉妬にかられたおさゐ、無理やりその帯を解かせ、さらには自分の帯を解いて「この帯を締めてよっ」と迫る。コワイな~げっそり

ところが、この姿を目撃され、庭に落とした帯を証拠に不義密通の濡れ衣を着せられてしまう。
自害しようとする権三に向かって、おさゐは、
「どうせ死ぬなら、ふたりで夫に討たれて死んで欲しい。そのほうが夫の顔が立つ」
と懇願する。
これ一見、夫を想うおさゐの配慮のようにみえるけど、本心は全然別。いっしょに死ぬことによって、権三を我がものにしたかったんでしょう。

おそらく権三は「おさゐの夫に申し訳ない」と素直に思っていたんでしょうね。おさゐの願いをしぶしぶ聞き入れますが、ここでさらにおさゐの追い討ち。
「だったらこの場で一度、『お前は俺の女房』といってくださいませ」
それで、無理やりいわせちゃう! まったく女の深謀恐るべしです!!

その後、ふたりはしばらくの間逃避行を続ける。もし、ほんとうに夫への貞節だけを守りたいのなら、即刻夫のもとを二人で訪ねて、潔く討たれればいいのに。

きっとこの間、実際の「過ち」も一度や二度は(あるいはそれ以上)あったと思う。
そうこうしてる間に、若い権三も次第に、おさゐに溺れていったんじゃないか・・・。

権三がおさゐのダンナに討たれるとき、それまではずっとおさゐとの距離を取っていたのに、斬られて倒れた後はじめて、すでに息を引き取っているおさゐに自らの体を引き寄せ、最期はおさゐを抱き寄せるようにして死んでいった。
この人形のちょっとした動きが、なによりそのことを示していると感じた。
(文雀さん&和生さんコンビ、深い!)

そして、ここで三味線が一気にピアニッシモ~~♪♪
まるで、罪業を背負ったふたつの魂が静かに消えゆくかのように・・・。

刃を向けるダンナに「お懐かしゅうございます」と身を捧げる貞節な妻の顔も、三人の子どもの世話を焼く母親としての顔も、そして12も年下の男に執心する女としての顔も、みんな同じひとりの女の顔なのだ。

恐るべき人妻!!
私は、おさゐのことをそう思う。

でも、それはあくまで私の感じ方。この話、たぶん人によって見方がさまざまだと思う。
そうやって自由に解釈できるのが、文楽ならではの面白さ。

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2008年12月 6日 (土)

よみがえった楽器

国立劇場に「文楽鑑賞教室」を観に行く。
拙著「熱烈文楽」を買ってくださった方など、文楽は初めての皆さん10人ほどといっしょ。
メイン演目「寺子屋」のクライマックス、松王丸の泣き笑いのところでは思わず涙、涙たらーっ(汗)
今や私もリッパな「文楽脳」となりました。

それにしても、今日のあらすじ解説は支離滅裂で、どーなんだ?
昨年、「沼津」の解説をされた吉田勘市さんがあまりに素晴らしかったので、ちょっとガッカリ。それとも、ああいう芸風と理解すべきなんだろうか?

あるいは、「寺子屋」という作品がそれだけ奥が深く、解説が難しいってことなのかもしれない。


帰宅したら、お筝屋さんから電話あり。
ある方から譲り受けたお筝の糸の張替えをお願いしてあったのが、できあがったので、届けてくれるとのこと。

譲ってくださった方のお義母様が、お筝の先生だった。
その方がこの夏、亡くなられてしまったので、たくさんお持ちだった筝のうち一面を譲り受けたのだ。

お筝屋さんいわく、楽器は確かに古いものだとのこと。
でも、糸が新しくなったおかげで、音色はびっくりするほど良くなった。

筝の先輩のアドバイスで、「口前」の部分(筝の右側の布カバーの部分)の布も張り替えてもらった。
薄いオレンジの大人っぽい柄を選んでくれていて、外見も見違えるように素敵になったぴかぴか(新しい)

なんだか、亡くなった方の魂を引き継ぎながら新しく生まれ変わった感じが、うれしい。
明日はこの楽器で練習してみよう。すごく楽しみだるんるん

浮舟なんかには負けないわよ~ウッシッシ
(月組公演「夢の浮橋」参照)

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2008年11月27日 (木)

NHK朝ドラ・上方と江戸の違い?

引き続き「だんだん」話ですんまへん。

昨日は「石橋最低!」とぷんぷん怒ってた私ですが、
「裏返せば、よほど石橋がお気に入りなんですね」
という、あまりに鋭いご指摘をいただいたおかげで、目からウロコ。今朝から心を入れ替えて石橋ウォッチャーと化すことにしましたです、ハイ。

それで気がついたのだが、あの石橋くん、文楽でよく登場する典型的な色男の系譜なのだ。そう、「源太」っていう二枚目かしらが使われる役ね。
彼らにとって二股は基本だし、しかも、頭ではダメとわかっていてもカラダが自然にそう行動してしまう、生まれついてのモテDNAのなせる技ってところがポイントだ。

そんな石橋くん、今日もまたやってくれましたね~ウッシッシ
舞妓ののぞみ(夢花)を、わざわざ別の店に呼び出した石橋くん。

石橋「君に、会いたかったんだ」
のぞみ「だったら、花むら(=のぞみが所属する店)に来てくれはったらいいのに」
石橋「だって、花むらには、めぐみちゃんがいるだろ?」
のぞみの心・・・きゅんハート達(複数ハート)ハート達(複数ハート)ハート達(複数ハート)

・・・もうもうっ、コノヤロ石橋パンチ!!


それで思い出したのだが、今年の上半期の「瞳」はNHK東京が制作だが、出てくる男性陣が皆ことごとくリッパでした!

勝太郎さんは里子を3人も育ててるし、ダンサーのKENは芝居は下手でも言うことは常に含蓄があった。瞳の父ちゃんも改心しちゃったし、唯一、ダメ男代表みたいだった勇蔵さんですら、最後にゃかつおぶし問屋の若社長におさまってしまった。
もちろん、二股男なんて決して許されず、唯一の二股男カツマタは築地の人々によってボコボコにされた。

いわばこれ、正義感に燃え、弱きに優しく、女は揚巻一筋の「助六」なんだよね。

それに比べると「だんだん」男性陣の情けないこと!
「二股男子たち」の忠父ちゃん&石橋くんを筆頭に、本日手切れ金の分厚い封筒を前に花鶴さんと別れを即決した西沢さんに至るまで、「リッパな」人がいない。
そんな男たちに振り回され涙しつつも、強く生きている女たち。

これまさに、「アホな男と賢い女」、文楽ワールドじゃん!
さすが、大阪制作のことだけはある??

(むろん私は「だんだん」派だ。やっぱ男は情けなくないと~、リッパな男の人は面白くないっすあせあせ


そう考えると、もしかしてNHKの朝ドラも上方風と江戸前では作風が違うんだろうか?

・・・といっても、私のなかのサンプルは、「だんだん」と「瞳」そして、「てるてる家族」しかないので、確かなことはいえないのだけど。

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2008年9月23日 (火)

女の幸せはどっち?(奥州安達原)

なんだか急に、文楽関連のことも真面目に書いておこう、という気分になっている。
文楽とは長い付き合いをするんだから、「熱烈文楽」がゴールじゃないからね。

というわけで、9月東京公演の二部は「奥州安達原」。
襲名披露でひたすら華やかな一部と対照的な、地味~で暗~い演目。
だけどこれが意外にハマってしまった。

時は平安時代、源義家に滅ぼされゆく奥州安倍氏の物語。
八幡太郎義家は勇猛さと賢さを兼ね備えた完璧な武将として描かれ、その知略に安倍一族は基本的には翻弄されっぱなしの展開だ。

にも関わらず、義家はあんまり魅力的に思えない。少なくとも友だちにはなりたくないタイプ。
源氏への復讐のためなら何でもやっちゃう、でも悉く裏目に出てしまう安倍貞任や、その母岩手なんかのほうがよっぽど好きだな。

こうした、歴史上の「負け組」に対する温かい視線が文楽の時代物の魅力だと思う。明智光秀が主人公の「絵本太功記」なんかも同じだ。

さて、「奥州安達原」では前半に平直方という老将の二人の対照的な娘が出てくる。
妹の敷妙は、今をときめく八幡太郎義家殿の正妻におさまり、両親にとっても自慢の孝行娘ってことになっている。

対して姉の袖萩のほうは、どうしようもない放蕩娘。
ゆきずりの侍と恋に落ち、デキちゃった結婚で親からは勘当。
しかもその相手というのが、父親にとっては敵方にあたる安倍貞任ときた。安倍氏再興のミッションに燃える貞任とはほどなく別れ別れになりシングルマザーに、やがて乞食にまで落ちぶれ、最期は父と夫との板ばさみになり自害してしまう。

この姉妹、女性として果たして、どっちが幸せだったんだろう?と、ふと考えた。

普通に考えたら、妹の敷妙のほうが勝ち組だ。
それに比べて踏んだり蹴ったりの袖萩。
にも関わらず、袖萩の人生も案外捨てたもんじゃないかも、と思うのだ。

だって、安倍貞任のような男性と両親も捨てるほどの大恋愛ができたわけだし、その男性との子ども(これがまた素晴らしく出来の良い娘)にも恵まれたわけだし。

女性として、これ以上の幸せがありましょうか??

対する敷妙と源義家夫婦はどうなんだ?
子どもはいないようだけど、たぶんセックスレスなんじゃない、とか意地悪なこと考えたり。

私だったら・・・やっぱり姉の袖萩の人生を選びたいなあ。
寒空に着るものがないのはツライけどね。

・・・と、そんなこと言ってるから、いつまでたっても負け犬人生から脱し切れないんでしょうか(≧∇≦)

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2008年9月22日 (月)

襲名披露公演

昨日は国立劇場にて9月文楽公演を一部、二部連続で観劇。昼11時から夜の9時まで10時間の文楽耐久レース。
が、途中一度も記憶を失うことなく文楽ワールドを満喫できてしまったよ。
さすが「文楽脳」な私!?

一部は吉田清之助さん改め豊松清十郎さん(五世)の襲名披露公演だったから、劇場中が華やかな空気でいっぱい。

開演前、紋付袴姿の清之助さん、いや清十郎さんがロビーの襲名披露特設ディスプレイ(?)の前で挨拶されてたから、私も「おめでとうございます」と一言ご挨拶して通り過ぎようとしたら、逆に清十郎さんのほうから、

「本、とっても評判がいいみたいですね~。私のところにも、何人か持ってこられた方がいましたよ。良かったですね」

と、わざわざ声をかけてくださった。
本公演で一番お忙しい立場、しかも本日千穐楽という日というのに、「文楽を楽しむ会」のときと変わらぬ気安さで声をかけてくださったことに感激!
この身近感が文楽ならではの魅力だよな。


ちなみに拙著「熱烈文楽」は劇場の売店でもかなり目立つように置いてくださっていた。
やったね! 目立ち度だけでは三浦しをんに勝ったぞ!(笑)
売店の方にご挨拶すると「たいへんよく売れましたよ~」とのこと。
どこの大型書店よりも、こうやって劇場横の売店で愛されるのはホントありがたいことだ。


本にも書いたけど、文楽の襲名披露は歌舞伎に比べるととってもシンプル。
ご本人は一言も発せず、師匠、先輩方がひとことずつ挨拶して15分ぐらいで終わりだ。

清之助さんには人形関係の部分の原稿をチェックしていただき、たいへんお世話になった。その清之助さんがこうして豊松清十郎を襲名される。
これから、清十郎さんがこの由緒ある名前を大きくしていかれる道のりをずっと応援する楽しみが私にはあるのだ。

ああ私、文楽に出会えて良かったなーと、改めて幸せな気分になれました。

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